こんにちは、
浜松駅前予備校(ハマヨビ)の平井です。
今日は本のご紹介。
小川さやか 著
『チョンキンマンションのボスは知っている』
アングラ経済の人類学
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余談ですが・・・
日曜日に天気が良かったので
ハイキングに出かけたら雪&雨・・・
寒さも厳しかったのでひきあげて、
帰り道の保木平珈琲さんで
暖まりました。
おかげで一気に読めました!!
話は本に戻り・・・
「イナズマが走る」
という表現は古いのかな?!
でも、間違いなくここ数年で
一番おもしろかった衝撃の1冊。
この本で、
河合隼雄学芸賞
&
大宅壮一ノンフィクション賞
受賞したのだとか。
これは受賞するわ!
私のような固い本が苦手な者でも、
途中で話しかけるな!
と思うくらい夢中で読んだのだから・・・
きっかけは、
小川さやかさんのインタビュー記事が
一面使って掲載されていた新聞記事。
現在、立命館大学大学の教授をされている
文化人類学者の小川さん。
研究室なのだろうか?
なかなかにモノが散乱しまくるカオスな部屋。
ソファーにゴロンと横たわり、
エスニックな布をかけている
小川さんの写真に惹かれまして・・・
人類学者ってここまでするの?!
と度肝を抜かれる
フィールドワークで明らかになる、
タンザニアの「ゆるさ」「したたかさ」が
最高におもしろい。
コロナ禍の日本に応用できることが
あるのではないかと考えさせられます。
インタビュー記事を読めば読むほど
本を読んでみたくなりました。
その後、本屋で見つけた
『「その日暮らし」の人類学――もう一つの資本主義経済』
を買って読んだのだけれど、
論文を読んでいるようで挫折。
おもしろさは感じたけれど、
難しさの方が先にきてしまった。
理解度は半分もいかなかったと思う。
忘れた頃に
『チョンキンマンションのボスは知っている』
をオットが図書館で借りておりました。
「これはすごい作品」
「今回は論文ではなくエッセイだから読みやすい」
と。
どうしようかな・・・
一瞬ひるんだものの、読んでみたらこれが、、、
いやー、
スルーしないでよかった!
チョンキンマンションは香港にある、
なかなかに裏も表もありそうな建物で。
たくさんの安宿と、
中国系と南アジア系の住民が経営する
ケータイ販売店やレストラン、雑貨店がひしめく
エネルギッシュな場所の模様。
「シャワーを浴びれば必ずトイレが浸水しになる」
「スーツケースを広げるスペースはまったくない」
でも
「思ったよりは清潔だ」
というくだりで、
小川さんがこれまで
どんなところでフィールドワークされていたかを知る。
そのマンションの自称ボスと出会い、
タンザニア人の商売の仕方や人間関係、
なにを大切に生きるのか?ということまでを
つまびらかにしてしまう。
寝坊して遅刻しまくったり、
愛人とのあれやこれやだったり、
チョンキンマンションのボスのダメっぷりが
これでもかと出てきて、とにかく笑える。
笑うしかない。
と思えば、
難民認定までの過程や、
香港で一旗揚げよう!
と、アフリカなどから
やってきた人たちが亡くなったときに、
母国へと帰す費用は協力しよう!
というところからの緩やかな組織づくり、
などなど・・・
すべてが計算済みなのか?!
ブローカーとしての腕前にも圧倒される。
「詐欺にあったときに一番頼れるのは詐欺師の友達」
とか、
もうなんなんだ?!
日本にいると
知ることもなかった世界がそこにある。
しかもその、
グレーな世界観の中にこそ、
日本人が忘れてしまった
幸せに生きていくうえで大切なこともあるのでは?
と考えさせられるのだ。
今の日本の、
「あなたに借りた借りはあなたに返す」
「しかも即時に」。
という、
常に貸し借りを清算しようとする仕組みだけに
しがみつくのはもったいないのかな?と。
貸し借りの帳尻が合っているかだけにとらわれると、
「私だけが損をしている」
という不満や恐怖が隣り合わせで存在する。
その点、
チョンキンマンションのボスのようなタンザニア人らは、
「私があなたを助ければだれかが私を助けてくれる」
という原則で社会を回しておられるよう。
だからなのかな?
私から見たら
スレスレ&ヒリヒリの日々でも
今を楽しんで生きることができるのかな?
と。
こんなところまで踏み込んで、
命の危険はないのかしら?!
と心配になるくらい、
裏の裏まで踏み込む小川さんの心意気と、
「知りたい!」という好奇心に心揺さぶられる。
「安心」「安全」が一番大切で、
リスクを減らすことばかりを考えてしまう自分に
風穴を開けてくれるような一冊。
安全・安心は大事なんだけど、
それだけじゃね・・・
小川さんを招へいする
立命館大学の目利き力、
すごいなぁと、
こちらも唸る。